機能からスタートするデザイン

ITmediaが愛媛の伊予鉄道グループが導入したFelica決済システムに関する特集記事を出している。

伊予鉄道はなぜ、「FeliCa採用」に踏み切ったのか(前編) (後編)


地域における電子マネー展開という観点からも注目に値するのだが、ここではFelica専用改札のデザインに注目したい。

首都圏においてJR東日本Suica専用改札ゲートを導入している。
機器自体のコストを下げ、ヘビーユーザーであるSuicaユーザーを優遇し、他のユーザにSuica保有を促すという点では一見合理的な施策に思えるが、実際はラッシュ時の混雑を増しただけという否定的な意見も多く発生している。

確かにSuicaユーザーとして専用改札があったからといって、既存の改札でも通過することができる上に、既存の改札のどまんなかに専用改札があるものだからSuicaユーザが優先的に改札を通過できるどころか非Felicaユーザが間違えて利用しようとして門前払いを食い、他のゲートに入りなおすなど動線が複雑になるばかり。結果的に改札全体の混雑が増すわけだからFelicaユーザにも非ユーザにもデメリットばかりが広がるわけだ。

これはSuica専用改札が、
・改札のレイアウト変更にかかるコストを抑えるために既存改札に混在して設置されている
・既存改札とデザインが全く変わらないため、ユーザの視認性が悪く、かつSuicaユーザにとっても利用するメリットがあまり見出せない
ということなのだろう。

一方伊予鉄道Felica電子マネー専用改札はこれ
この専用改札は
・明らかに違うデザイン→視認性に優れる
・大きな液晶ディスプレイ、カードリーダの位置がより目立つ
ユーザビリティとしても優れる
・筐体の大きさが圧倒的に小さい→通過における心理的圧迫感が低減される
ということから、明らかにSuicaユーザに対し利便性を提供するものであろう。
そもそも(従来型と比較して)デザインもすっきりしていて好ましい。

技術的にはFelicaリーダ・ライタなんて小さくするのは容易なのだから(小売店舗のレジについている端末やバスの運賃箱についているものを見れば一目瞭然)導入は容易なはずなのに、JR東日本が既存設備のレイアウト変更等々のコストを慮って中途半端に既存機器のデザインに押し込んでさりげなく(というつもり)導入したのはアダとでたような、、、、、

電子マネーは全く新しい決済手段であり、磁気式の切符と全く異なるものなのだから、リーダ・ライタ(ここでは改札)に要求される機能は異なる。
であれば、素直に機能からスタートしたデザインを起こし、既存環境にどう導入するか、もし既存の環境を大きく変えるのが合理的だとすればどのような手順で導入するかというのを真剣に検討すべきなのだろう。

プロダクト単体のみならず、それが利用される環境やビジネスを含め、デザインを起こす時は機能と対話し、必要あれば周辺環境まで含めてリ・デザインすべきであろうと思う。